芸術広場|Office I Ikegami blog

あいちトリエンナーレ2013 (その2)

■アートを通じて社会を考えるきっかけに。10月27日まで。
名古屋と岡崎で開催中の2回目のあいちトリエンナーレ。現代美術やパフォーミングアーツなど100作品を超す膨大な内容だが、意欲的で一見の価値がある。閉幕が近づいてきたが、未見の方は是非のぞいてみてほしい。

前回と比較すると、今回の特徴は、第一に東日本大震災を意識したテーマ「揺れる大地―われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」が全体にわたり明確に一本通っていること、第二には建築家の参加も多くあって、空間・場所の読み変えを行い、その可能性を引き出すアプローチが目立つことを感じた。また第三には、新たに岡崎地区が加わったことで、観客は移動が大変ではあるが、広い範囲での盛り上がりが生まれたこと、そして第四としてロゴによる全体のサインなどのデザイン計画が行き届いた形で展開されているのも、進化する祭典として好ましいことと思った。

国内外のアーティストたちによるテーマの解釈も表現も、大震災に関わるものから、アイデンティの揺らぎや政治の変化を扱うものなど実に多様だ。大震災に直接関わる作品も多い。例えば、オノ・ヨーコの名古屋タワーや岡崎駅前に掲げられた《生きる喜び》、ヤノベケンジによる黄色い防護服の「ヘルメットを脱いだ」巨大な子供の立像《サン・チャイルド》、そしてアーノウト・ミック(オランダ)の避難所を主題とした《段ボールの壁》。またアルフレッド・ジャー(チリ)の作品《黒板プロジェクト》は、美しいチョークの山を中心に広がる暗黒の空間に黒板がいくつもあって、東原貞子の詩「生ましめんかな」が浮かんでは消える。学校を震災で失った石巻市の子供たちに捧げるものだ。それぞれの作品が絶望や喪失感の先のものを示唆する。また、宮本佳明の《福島第一さかえ原発》では、愛知芸術文化センターの建物の壁や床に福島原発建屋の原寸大図面を赤と黄色のテープで貼って示すことで、原発の存在を具体的に見せた。一方、アンジェリカ・メシティ(オーストラリア)は移民のアイデンティを扱った。《シティズンズ・バンド》の映像作品は、パリのプールで水を打って見事なドラミングを行うカメルーンのパーカッション演奏者の女性ら、それぞれ外国で移民として暮らす4人が民族色の濃い音楽を奏でる。音楽とパフォーマンス、そして心情を重ねて描き、深い感銘を受けた。

場所の可能性を積極的に引き出すアプローチとしては、青木淳が黒川紀章設計の名古屋市美術館の建築を新しく解釈して一時的なリノベーションをし、参加アーティストらとのコラボレーションを行った。通常の出口が今回の入り口に変わった。杉戸洋とのコラボレーションではひらひらと舞う透明な布による豊かな色彩空間を創出。狭い出口から美術館の外に出たとき、私は不思議な印象を持った。名古屋まちなかの納屋橋会場は、元はボーリング場だったが、現在は使われなくなった建物。リチャード・ウィルソン(イギリス)は屋外までボーリングのレーンを突き抜けさせた《Lane 61》で、建物の記憶を浮かび上がらせた。また同会場で、青木野枝は2トンもの重い鉄の作品《ふりそそぐもの》によって、古い吹き抜け空間を軽や流動的なものに変容させてしまった。名和晃平の《フォーム》はぷくぷくと日々変化する無数の粒子が魅惑的な情景を形成してゆく。世界創造の場のようだ。長者町会場ではまち歩きと作品体験を同時に楽しめた。伏見地下街通路に描かれた打開連合設計事務所(台湾)の《長者町ブループリント》では現実空間と異空間が重なり合う。

岡崎地区は3会場あり、そのうちの康生会場のスーパーである岡崎シビコでは広い面積を効果的に使ったインパクトのある作品が目立った。屋上のstudio velocity(栗原健太郎+岩月美穂)の作品は、どこまでも続く真っ白な世界に驚いた。目が慣れてくると、頭の上が全面、格子状の細い糸に覆われていることに気づく。ここで風に吹かれながら近くの岡崎城や空を眺めていたら、トンボが飛んできて器用に網の下に入り、しばらくして出ていった。

なお、廣村正彰アートデイレクターのデザインによる矢印のロゴ(あいちのA とトリエンナーレのTから成る)は前回の赤系から、今回は青と白の組合せに変わった。爽やかである。矢印を囲むシャープな斜線を使ったデザインは、皆で一緒になって突き進む飛行船のような造形で、テーマの言葉も明確に表示。名古屋地区では白地に青い文字、岡崎では青地に白い文字と、反転して使われる。まちのなか、各会場、印刷物などにわたって一貫性をもった丁寧なデザイン計画がなされている。岡崎のシビコでは、誘導線としてのロゴが床に大きく描かれ、上階にある会場まで導いてくれた。

五十嵐太郎芸術監督は「アートを通じて社会を考えるきっかけになってほしい」と開幕前の記者会見で語ったが、その願いは見事に実現しているのではないだろうか。

執筆:HOSOKAWA Fonte Idumi

●会期:2013年8月10日~10月27日
●詳細:http://aichitriennale.jp/


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