January 12, 2026
黄金に輝く彫刻、豪華な家具、ひときわ目を引く4 つの天井画。なんて煌び
やかなバロックのサロン・・・まるでヨーロッパの宮殿にいるかのよう。
六本木 国立新美術館で開催されている「リヒテンシュタイン華麗なる侯爵
家の秘宝」展。
エントランスから一歩足を踏み入れ絵画や彫刻に目を凝らして進んでいると、
いつのまにか時を忘れ、距離や時代をも超越した世界にいることに気付く。

「ようこそ、わが宮殿へ」
展覧会のキャッチコピーが頭のなかで鳴り響く。そう、ここは・・・
スイスとオーストリアの国境にある小さな国、リヒテンシュタイン侯国。
東京23 区より小さく人口約3 万5 千人のこの国は、1719 年にオーストリア
の一貴族リヒテンシュタイン侯爵家によって建国された。
家訓に基づき、歴代の侯爵によって蒐集されてきた数々の美術品は、どれ
も至宝と呼べるもの。今回初来日を果たした作品の見どころとは?

エントランスの神話を題材とした作品を過ぎると、目の前に現れるのは宮殿
のサロンさながら豪華絢爛なバロック様式の広い部屋。ヨーロッパに瞬間移
動したかと錯覚を起こすほどだ。前半いちばんの見どころではないだろう
か。

特に、迫力の天井画や黄金の家具調度品が素晴らしい。18 世紀のコンソー
ルテーブルや書き物机など一度でいいから使ってみたい贅沢な作品が並ん
でいる。
続いて、名画ギャラリールネサンスとイタリアバロックの部屋。中でも私が注
目したいのはラファエロでもなくクラーナハでもない、チーロ・フェッリ作の「井
戸端のキリストとサマリアの女」。

タイトルからわかるように、井戸の周りでキリストと女が会話をしている絵画
だ。俗に「井戸端会議」などといわれる日常の風景は17 世紀当時からあっ
たのだろう。描かれているのがキリストにせよ親近感がわく作品である。
また、中盤あたりに設けられている映像コーナーも見逃せない。わずか数分
で「リヒテンシュタインの歴史」と「美術コレクションの始まり」が理解できる。
そして、この展覧会の大きな見どころが、ルーベンス・コレクション10 点を飾
る部屋。街中に貼られたポスターで一躍脚光を浴びた幼い愛娘クララの肖
像は、思ったより小さな作品だったが、あのまっすぐなまなざしには誰もが引
き込まれるに違いない。他にも横4 メートルの大作や、肉感が生々しい「サ
テュロスと召使い」などどれも一見の価値あり。
貴重で奇妙な収蔵品を飾る一室クンストカンマー「美と技の部屋」を経て、最
後の名画ギャラリーへ。レンブラントやハルス、カナレットなど名だたる巨匠
の絵画が並び、どこか哀愁漂う印象のビーダーマイヤー絵画へと続く。
個人的には、19 世紀オーストリアの巨匠ヴァルトミュラーの静物画を見るこ
とができて嬉しい。市民派の肖像画・風俗画家というイメージを持っていた
が、こうした細やかな静物画も得意だったとは。

これでひとまず宮殿をあとにするのだが、疲労感や期待外れ感は全くなく、
「贅沢な空間を堪能させて頂きました。」のひとことに尽きる。
18 世紀に築かれた国リヒテンシュタイン候国。歴代の侯爵が蒐集し、戦争を
超えて受け継がれてきた美の遺産は必見だ。
ふじきゆみこ
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