January 12, 2026
東京都庭園美術館
没後25年、「ロマネスクな異色新人」「画壇のシンデレラボーイ」と呼ばれ、鮮烈なデビューを果たした有元利夫の藝術に魅了され、いまだに人びとの記憶にずーっと残り続けている有元利夫の10年にわたる画業を振り返る企画展に行って来ました。
今回は、絵画ばかりでなく、版画、彫刻、陶芸まで幅広く芸術的欲求の留まることなく、美への執念と自分自身への可能性にかけた展覧会になっている。芸術という出来上がった造形物に、そのまたさらなる彼方へ、何か最高の輝きのようなもの得たいと念じている。その何かが「いのち」なのか「生」なのか不明瞭な不可解な割切れないモノに駆り立てられ、生き急いだ芸術家の一人かもしれない。
彼の好きなことばに「風化」ということばがある。美術出版社刊「有元利夫と女神たち」の中でも書かれているが、”風化したものは、僕にとっていつも美しく物語のある空間です。こする、ちびる、へる、おおわれる、こびりつく、ひびわれる・・・こんな風化の美しさが画面に出てこないかなアと思ってやっています。自分の気に入ったモチーフをランダムに、趣味的に選んで、自由で気ままな空間を作り、その空間にドラマが生まれ、物語が聞こえてくれれば良いと思います。「風化」は、一般的に、結果として現れるものですが、僕の場合は、そんなわけで、「風化」は目的であり、積極的に「風化」を捉えてみたいと思うのです。”
有元利夫の仕事のすすめ方は、絵のほうから「お呼び」がかかるのを待って、無造作に余った絵具を「捨て絵具」として、いい加減に白い画布の上に「捨てて」おく。そのうち形や情景が画面に浮かび上がってきて、画家に「お呼び」がかかる。色感に恵まれ、作品に時間を沈み込ませる、何にでも変容し得るものを持っていて、色・斑点・夢の変容をそのまま表現するような神気を秘めている様式美の絵である。
「天にも昇る気持ち」、至福感、絶対的快感・・・、人間の深部に根ざしているごく普通の感覚「通俗」へとこだわり続けてきた「時間」をパッと超えようとする有元特有の時代やジャンルにとらわれない自らの「様式」を作り出し、「音楽」特にバロック音楽との融合=真からの芸術の自然性(岸田劉生の言葉)による大きな小宇宙の構成を感じる。
代表的な展示作品は
«私にとってのピエロ・デラ・フランチェスカ» «花降る日» «室内楽» «春»
«ささやかな時間» «ロンド» «運動する人» «厳格なカノン» «立体の数々»
何時までたっても、気になる不思議な画家です。
そして、未完成が納得できる画家です。
ヘドデル キドリンスキー
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