January 12, 2026
東京都美術館で開催中の「冷泉家時雨亭叢書完結記念 冷泉家 王朝の和歌守展」を観て来た。
“冷泉家時雨亭叢書”全84巻(朝日新聞社刊)の完結記念と銘打って、俊成筆『古来風躰抄』、定家筆『古今和歌集 嘉禄二年本』『後撰和歌集 天福二年本』『拾遺愚草』『明月記』の国宝5点、約400点もの重要文化財が一堂に公開される本邦初、文学史上、画期的な歴史資料企画で、目にもの見張るがあった。また、冷泉家所蔵の天皇の書「宸翰」も披露され、天皇から拝領した御衣で表装された華麗な作品群は”みやびな世界”へと誘われる。
冷泉家は、平安時代末期から三代続けて勅撰集撰者となった藤原俊成、定家、為家を祖にもち、歴代が宮廷や武家の歌道師範を務め、王朝文化の華であった和歌の伝統を800年もの歳月を経て、今日まで受け継いできた、日本でも世界でも類を見ない貴重な文化を継承する「和歌守」の歌道家元である。
勅撰集(天皇や上皇の命による和歌集)や私家集(個人の歌集)をはじめ、歌学書、日記等の古記録、風土記、宸翰(天皇の書)など、冷泉家の文化財は数千件にものぼる。
冷泉家に残る私家集には気品を感じさせる着色や模様がほどこされた料紙を使い、鑑賞のために美しく飾られた本も多い。「平安装飾本」と呼ばれる豪華な私家集のなかでも、定家がこよなく愛し、手本参照した平安中期の «素性集 色紙本»(重要文化財)のきらびやかさがひときわ目を引く。また、「破り継ぎ」(色の異なる二枚の紙を破ったような複雑な形や雲形に切って貼り合わせたもの)技法をほどこした平安中期の «道信中将集»(重要文化財)や、天皇から拝領した御衣を転用したとされる軸の装丁もあり、宮廷の色彩感覚や貴族の伝統文化の様相をを今に伝える。
時代の反映が本にも影響している顕著な例が「鎌倉装飾本」にも現れていて、装飾料紙を用いず「破り継ぎ」「重ね継ぎ」のような損壊の不安のある技法は廃れ、その代わり、表紙に多くの装飾料紙を用いた、金箔散らし、銀泥でデザインされた派手な、大ぶりな立派な武家方の風潮が流行した。«土御門院女房»«金沢文庫本万葉集»«入道大納言資賢集 真観本»
さらに、七夕の優雅な伝統行事である学芸祈願の『乞巧奠』(きっこうてん:和歌の門人たちの技芸が巧みになることを願い乞う祭典)や歌会、舞などの文化的な年中行事、庭では昼間は「あげ鞠」という蹴鞠、日が落ちると室内に移り、雅楽を奏で、灯台に明かりが入るころ和歌の献詠披講(和歌を声に出して詠う儀式)がはじまる。
こうした有形、無形の伝統文化を歴史のたび重なる戦乱のなかで守り続け、乗り越えてきて今日に至り、粛々とこれからも変わらず続いていく「和歌の家」冷泉家に対して、歴史文化史上の驚異としか言いようが無い。 これは、日本人であれば・・・必見です!!!
西洋絵画や若冲の画のような派手な豪華な展覧会ではない。一見、和綴じの歌集がただ並べられている感じがするが、多くは知らなくても日本文化の真髄が伝わってくるようであり、並べられた品々は古代からの深い彩りを纏い、静かに語りかけてくるようである。
丁度、いいことに「芸術新潮」11月号(新潮社刊)で、特集 «京都千年のタイムカプセル 冷泉家のひみつ» が発売された。
この展覧会の監修者でもある藤本孝一氏(龍谷大学教授)や石川九楊氏(書家:京都精華大学教授)五味文彦(歴史学者:放送大学教授)の解説が尾(美)に入り際(彩)にいり、面白く為になった。現代歌人の馬場あき子、俵万智、水原紫苑、などなどの好き嫌い解説は、言いえて妙であるし、面白い。
会 期は2009年10月24日(土)〜12月20日(日)
ヘドデル キドリンスキー
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