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マリオ・ジャコメッリ写真展

2008年、東京都写真美術館にて初めて本格的に紹介され、「黒」と「白」=「死」と「生」のハイ・コントラストで孤高の写真表現で現実を抽象した作品は開催された「マリオ・ジャコメッリ」展より5年がたち、放ち
はNHK新日曜美術館でも特番が組まれるほどの日本初デビューを飾った。あれから5年の歳月を経て、大幅に作品を増やし作家の本質に迫る大展覧会になります。
「ホスピス」「スカンノ」「神学生たち」「善き大地」「ルルド」などの代表作はもとより、前回紹介されなかった8シリーズの中から、レオパルディの詩に触発された「シルヴィアへ」、エミリー・ディキンソンの詩による「私は何物でもない」等々の詩句こそが、形あるものを作り出しいていくための強力な核になっている。

マリオ・ジャコメッリは幼くして父を亡くし、町のホスピスの洗濯婦として働いていた母の姿を通して、人生の終末の残酷な光景、抗えぬ老いを目の前に幼児体験の中から性格が形成されていく、美に対する感性の予兆ともいえる。
ジャコメッリの写真は、全体が一つの詩であるかのように観る者の中身に迫ってくる。すべての写真が、大地の質感で練られ、白と黒との痛いようなコントラストを持ち、過去の経験の癒えざる傷口をあからさまに突きつけてくる。
「ホスピス」のタイトルはチェザレ・パヴェーゼの「死がやってきてお前の目を奪うだろう」であり、「神学生たち」はダヴィッド・マリア・トゥロルドの「私には顔を撫でてくれる手がない」とつけているように、詩句と写真が呼応している。

ジャコメッリの写真は、多くの写真家たちに影響を与え、モノクロの強いコントラスト、苦悩を詩的で奥深く普遍的なものとして表現する強力な個性を見い出し
国際的にみても独創性の高い作家のひとりであり、死後10年を経た今でも、新しいものを生み出してくれるような気がする。

特に、広大な大地のなかではたらく農夫たちのリズム、神学生たちの雪のなかでのダンス、印刷所での仕事の傍ら、日曜日にはカメラを手に
近隣の丘陵地帯を歩き回り、人間の存在をユニークな在り様で表現してくる視点は素晴らしいものがある。

まだまだ死んでいない!
われわれを鳥瞰的に観察しているかもしれない!


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