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アートニュース 第26回 五島記念文化賞 
美術新人賞に小瀬村真美さん、堀江栞さん

   美術とオペラの分野で新人を発掘し、一年間の海外研修や、帰国後の成果発表などの助成で育成をはかる五島記念文化賞(主催・公益財団法人 五島記念文化財団)の第26回の受賞者が決まり、美術新人賞に小瀬村真美さんと堀江栞さんが選ばれた。4月16日に東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルで贈呈式が行われ、選考委員長で世田谷美術館館長の酒井忠康氏から賞状と賞金50万円、副賞の海外研修費400万円の目録が授与された。 

   小瀬村真美さんは1975年神奈川県生まれ。2005年に東京芸術大学大学院を修了し、現在、和光大学芸術学科准教授を務めている。写真の加工や絵画の構図などを駆使した映像インスタレーションや写真で現象とイメージとが交錯する作品を発表してきた。贈呈式での講評で選考委員長の酒井忠康氏が、小瀬村さんを推薦した平塚市美術館館長の草薙奈津子さんが、「小瀬村さんの作品『四季草花図』(2004~06年)を見た時から、古典的なものへの思考を持ちながら、現代的な時間や空間処理への関心があると感じ、興味をひかれてきた」と高く評価していることを発表した。
   小瀬村さんは来年1月からアメリカのニューヨークを拠点に、写真、映像作品を中心とする研究や滞在制作を行う予定。「これまで、子育てなどで作家としての仕事が思うようにできなかったこともあり、一年間、作家の仕事に集中できるのが嬉しい。もっと頑張れと言われているようで励みになった。ニューヨークは、写真や映像関係のスタジオが多いので作家と交流を図り、頭をリセットしてもう一度勉強し直すつもりで研修したい」と抱負を述べた。

   堀江栞さんは1992年フランス生まれ。2014年多摩美術大学を卒業。専攻は日本画。人物や動物の皮膚をクローズアップし、質感をとらえた独特な作品を発表している。
   推薦者で多摩美術大学教授の日本画家、中野嘉之氏は贈呈式の祝賀パーティー会場で、「普通の絵描きの目線とは異なり、皮膚感覚で物事を見ている。リアリティーを持った特異な絵描きになると直感した。まだ20代であり、ほかの人にはない解釈がどのように展開するのかが楽しみな逸材だ」と高く評価した。
   堀江さんは、来年3月からフランスのパリを拠点に研修を開始する。「世界の美術が集中し、自分が一番興味のあるものが集まっている国なのでフランスを選んだ。日本画に触れてからまだ5年ほどしかたっていない未熟な私がこのような賞をいただけたことがいまだに信じられない。たくさんの物を見て、吸収し、描きたいものにひたすら向き合う1年にしたい」と喜びを語った。

   美術部門の対象者は40歳以下で日本国籍の美術制作者。選考は、12人の推薦委員が推した10名の候補者の中から、選考委員長の酒井忠康氏をはじめ、多摩美術大学教授の海老塚耕一氏、武蔵野美術大学教授の柏木博氏、美術評論家の宝木範義氏、東京国立近代美術館副館長の松本透氏、京都国立近代美術館館長の柳原正樹氏ら6人の選考委員が、作家による持ち込み作品のプレゼンテーションと、面接をもとに行った。 
   なお、受賞者には、賞金、副賞に加え、帰国後の成果発表に350万円の助成金が支給される。

執筆:西澤美子


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