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第42回木村伊兵衛写真賞に原美樹子

・5月10日まで大阪ニコンサロンで受賞作品展開催中

  第42回木村伊兵衛写真賞(主催:朝日新聞社、朝日新聞出版)が原美樹子の『Change』(The Gould Collection)に決まった。4月17日に東京・一ツ橋の如水会館で授賞式が行われ、原に朝日新聞出版の青木康晋社長から賞状と賞牌、賞金100万円が贈られた。
  同賞は、写真家の故・木村伊兵衛の業績を記念して1975年に創設された。対象は授賞前年の一年間に国内外を問わず、写真集、雑誌、展覧会などで優れた作品を発表した新人写真家。選考経過を発表したアサヒカメラの佐々木広人編集長によると、今回は約250人の写真関係者らにより推薦された42人の候補者の中から写真家の石内都、鈴木理策、ホンマタカシと佐々木編集長の4人の選考委員による一次審査で8人(金川晋吾、金山貴宏、小林健太、西野壮平、原美樹子、細倉真弓、横田大輔、吉野英理香)がノミネートされ、最終審査で3人(西野、原、横田)に絞られ、議論を重ねた結果、原に決定した。

  原美樹子は1967年富山県生まれ。90年慶応義塾大学文学部卒業。96年東京綜合写真専門学校研究科卒業。第13回キャノン写真新世紀佳作、第8回ひとつぼ展入選。96年に初個展「Is As It」を開催。以降、国内外のグループ展や個展で作品を発表。2014年ロサンゼルスのゲティ美術館での「In Focus:Tokyo」展に長野重一、森山大道、瀬戸正人とともに出品。ゲティ美術館、ヴィンタートゥール美術館ほかに作品が収蔵されている。
  受賞作はカメラのファインダーをのぞかない撮影方法で、日常を切り取ったスナップ写真による原にとって3冊目となる写真集で、アメリカの小説家スティーヴン・ディクソンの短編とのコラボレーション作品。日米仏の女性編集者らが共同編集し、英語版としてフランスで印刷製本され昨年刊行された。男の子3人の母親として育児に追われる時期も含めた10数年間に撮影した写真から約40点が収められている。

  授賞式で原は、自らが用意した原稿を読み上げるかたちで「どうしようとわからないが連なったまま、手探りのまま、目の前のことに右往左往しながらやってきた。それが正しいのかどうかもわからないままだった。そんなあやふやな自分が仮にも写真家の体を成しているとするならば、それは写真に写ってしまった光景がそこに確かにあったこと、そして、自分以外の方々の力によるものだと思う」など、周囲の人々や、昨年亡くなった、夫で写真家の原英八への感謝の言葉を述べた。
  また、撮影に関しては、「動物的に体で撮っていると言われたことがあり、そういう部分もあると思う」と言い、受賞は「思いもよらないことだった。家のこともあったので今のところ何の予定もないが、写真を辞めないで続けていくことが当面の目標だと思う」と話した。

  選考委員の石内都は「3人子どもを産みながらずっと写真をあきらめなかったということは本当にすごい。ハンパじゃない。女性としてのキャリアを積みながら、写真と関係を持つということはすごく大変なこと。その両方ができるのはすごく才能があるからだと思う」と述べた。また、原の写真については「ノ―ファインダーというところが面白い。撮れるようでなかなか撮れない。写真は計算ではないので、その場で瞬間を計算せずに自然にノ―ファインダーで撮っているということも一つの才能」と高く評価した。

  なお、受賞作品展が5月4日から10日まで大阪ニコンサロンで開催されている。新宿・ニコンサロンでの展覧会は終了。(4月11日~24日)

執筆・会場写真:西澤美子(文中・敬称略)

第42回木村伊兵衛写真賞 受賞作品展
原美樹子 Change
5月4日(木)~5月10日(水)※会期中無休
大阪ニコンサロン
(大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階ニコンプラザ大阪内)
☎06-6348-9698
10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
詳細:http://www.nikon-image.com/activity/salon/schedule/

写真キャプション
① 賞状を受ける原美樹子
② 賞牌を手にする原
③ 原美樹子《Untitled.1996》
④ 受賞の喜びと感謝の気持ちを述べる原
⑤ 原美樹子《Untitled.2008》
⑥ 原美樹子《Untitled.2006》


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