芸術広場|Office I Ikegami blog

髙田安規子・政子 Four seasons

  東京・世田谷の住宅地にあるGALLERY TAGA2で髙田安規子・政子の四季をテーマとした展覧会が開かれている。
  双生児ユニットの2人は、トランプに刺繍をして大きな絨毯に見立てたり、軽石で円形競技場を表現したり、今年2月に当サイトでも紹介したMOA美術館の「光琳アート 光琳と現代美術」で尾形光琳の《燕子花図屏風》の切手をレース編みにした作品を出品するなど、日常にあるありふれたものに細密な技巧で手を加え、壮大なスケールのものを小さなものの中に閉じ込めることで、スケールも価値も異なるものに転換する作品を作っている。今回は「身近なものの中に大きな時間の流れが表れるように、四季の循環を表現した」。また、ギャラリーの室内空間の雰囲気を崩さないよう考慮し、作品の素材を選択し制作した。

●カーテン、皿、クロスの絵柄が四季の情景に
  2階建ての建物の上の階の洋間には、カーテン、皿、テーブルクロスを用いて制作した3作品を展観し、「ギャラリーをリビングのような日常空間へと様変わりさせている」。いずれも白やベージュ、ブルーなど「単色の柄のインテリア用品に鮮やかな色彩を装飾的に加えることで、四季の移り変わりを際立たせた」。

  カーテンの作品は《Turning of the seasons/季節の移ろい》。森や田園の風景がベージュ色にプリントされたカーテンの木の絵柄にリボン刺繍が施され、花が咲き、緑が深まり、紅葉し、雪が降り積もる情景が浮かび上がっている。四季がクローズアップされると同時に、際立つ色彩が周囲の空気を明るくする。
  「カーテンの柄は風景がパターンとして繰り返されるので、四季が1年間ではなくて、ずっと循環していくことで大きな時間の流れになることを感じさせてくれる」。
  制作で苦労した一つは生地選びで、「捜すまでに時間がかかった」という。使用したのはアメリカの生地。フランスなどにも同様の柄の生地はあるが、人物が入っていることが多く、今回は自然の情景だけが描かれているものを捜していたため、この1枚しか見あたらなかった。また、リボン刺繍も初めての挑戦だったという。

  皿を用いた作品は《Four seasons plates/四季の皿》。4枚の陶磁器の絵皿に描かれた、葉のついていない落葉樹にトールペイントで葉を描き足し、それぞれを春夏秋冬の風景に作り替えた。小さな皿の中に季節が収まっている。

  テーブルクロスを用いたのは《Leaves/葉》。木製のテーブルに掛けられたリーフ柄のテーブルクロスの柄の葉の部分を刺繍した。若葉が濃い緑色になり、紅葉して落ち葉となって、雪の結晶が付く変化を示したインスタレーション作品。「テーブルから落下した落ち葉は、やがて腐葉土となり、堆肥化し、樹木の芽吹きのエネルギー源になる。そうした自然のサイクルを暗示している」。

  3つの作品を通して「日々の暮らしの中で季節を感じる時、それは延々と繰り返されている大きな時の流れの一時であることを思い起こしてみてほしい」という。

  なお、1階では、四季が生まれるメカニズムを見せるため、太陽の光をあてると紙が焼けることを利用した《紫外線ドローイング》3点を発表している。いずれも太陽に関する図柄を用いている。

  髙田安規子と政子は1978年東京都生まれ。安規子は2001年多摩美術大学を、政子は同年東京造形大学を卒業。2005年2人共にロンドン大学スレード校美術学部修士課程修了。主なグループ展に「MOTアニュアル2014フラグメントー未完のはじまり」(東京都現代美術館)2014年、「春を待ちながら」(青森・十和田市現代美術館)2015年、「光琳アート 光琳と現代美術」(静岡・MOA美術館)2015年など。

執筆・西澤美子(文中敬称略)

髙田安規子・政子 Four seasons
10月29日(木)~11月24日(火)※水・日曜・祝日休廊
12時~19時(最終日17時まで)
GALLERY TAGA2(東京都世田谷区祖師谷1-34-2)
☎03-6411-5590
詳細http://gallerytaga2.com

写真キャプション
①《Turning of the seasons/季節の移ろい》
②《Turning of the seasons/季節の移ろい》(部分)
③《Four seasons plates/四季の皿》
④《Leaves/葉》
⑤《Leaves/葉》(部分)


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